Outlook上のカレンダー、連絡先、タスクをGoogleと同期させている方なら、OutlookでやりとりするメールもGmailに同期させて使いたいというのが人情というもの。しかしOutlookでGmailの送受信をするように設定するのは簡単ですが、快適に使えるかというとそうでもありません。OutlookでGmailを使うと遅い(重い)のです。私は過去に何度もOutlookでGmailを使おうと試みましたが、そのたびに最適な方法を見つけられずに挫折していました。
私は、無料のOutlook.comの他に、IMAPも使えるプロバイダーのメールアドレスも持っているので、PCのOutlookだけで使うなら、メールはそちらを使えば良いのですが、メールを同期させてスマートフォン(Android)で使う場合、結局Gmailがいちばん使いやすかったので、気を取り直してOutlookをGmailに最適化する方法を探ってみました。
最適化といっても快適の尺度は人それぞれ違いますし、メールの運用方法にもよるとは思いますが、私なりの結論(最適化方法)を得ることが出来ましたのでご紹介したいと思います。
ちなみに私の場合、同期速度は約5倍になりました。なお、この記事では速度だけでなく 使い勝手の最適化も行います。
おことわり
- ここで紹介する方法は、Gmailでたくさんのラベルを使っていて、かつGmailのフィルターを使って常時たくさんのラベルをGmailで自動的に付与させている方には向いていません。ラベルがたくさんあっても構いませんが、Gmailで自動付与するラベルの種類が少ない方がより効果的です。また保存しておくメールの仕分けは基本的にOutlookで行うため、1通のメールに対して「複数」のラベルをつけたい方にも向いていません。OutlookをGmailに最適化するには、Outlook側の設定はもちろん、Gmail側もOutlook的なフォルダ構造で使うという発想の転換が必要になります。
- Outlook2010および2016での動作を確認していますが Outlook2013では検証していません。設定操作については自己責任でお願い致します。この記事の内容に基づいて設定した結果、万が一何らかの不具合を生じた場合であっても当方では責任を負いかねますので、あらかじめご了承下さい。
快適じゃない原因は一体何なのか?
私にとってOutlookでのGmailを利用する上での快適さを大きく損なっている現象は次の2点です。
- 同期(送受信)がとてつもなく遅い
- メールの整理(移動や削除)がやりにくい&Outlookの受信トレイにはカテゴリ分けの機能がない
まず、ひとつ目については、どうやらメールの送受信実行時にGmail上のすべてのフォルダ(ラベル)と中身を完全同期(ヘッダー、本文、添付ファイルなど)させているために時間がかかっているようです。同期中であっても一応他の操作はできるのですが、画面の下にいつまでも送受信のプログレスバーが居座っている状態はちょっと目障りです。
そしてふたつ目については、Gmailが「ラベル」という仕組みですべてのメールを管理しているのに対して、Outlookはフォルダやサブフォルダという仕組みでメールを管理しているため、メールの削除や移動といったOutlook上の操作がGmailのそれとマッチしていないことが原因です。
メール管理におけるGmailとOutlookの違いを図にしてみました。
メールをフォルダで管理するOutlookは、同一のメールが受信トレイと仕分けフォルダに同時に存在するようには設計されていないので、Gmail上のラベルを全部同期してしまうとメールの重複が発生してしまいます。
これがGmailと同期させたときにユーザーが混乱してしまう原因になっているのです。なお、受信トレイでカテゴリ分けが出来ないことについては、これまたOutlookの仕様です。
最適化するためのポイント
快適じゃない原因が分かったところで、最適化するためのポイントが見えてきました。同期速度の問題を改善するポイントは以下のとおり。
- 送受信時に同期するフォルダ(Gmail側のラベル)を減らす
- 受信するメールを完全ダウンロードさせない
一見、上記の2つを行うと「Outlookでメールがチェックできなくなるのではないか?」と思ってしまいますが、そうではありません。
IMAPで接続されたOutlook上のフォルダ(Gmailのラベル)は、クリックしたときにメールを読み込んでくれます。ネットに常時接続されているのであれば、送受信時にすべてのメールをあらかじめ同期(ダウンロード)しておく必要はありません。
Gmailでラベルを全く使っていない方であれば、受信トレイのヘッダー情報だけ同期(ダウンロード)すれば充分で、これだけで送受信時間を劇的に短縮することが出来ます。
なお、あくまでも送受信時に同期させるラベルの数を減らすだけで、フォルダ自体を表示させない(≒フォルダの購読をやめる)わけではないので、メールの保存(アーカイブ)の構造を変える必要はありません。
メール管理がやりにくいという問題については、削除などの挙動はOutlookにあわせつつ、さらに受信したメールの処理について、Gmailの新しい受信トレイのカテゴリ(メイン、ソーシャル、プロモーション、新着、フォーラム)になるべく近づけて、メールチェックを快適にしていきます。ポイントは以下のとおり。
- 保存する必要のないメール(某大手ショッピングサイトからのメルマガ、オンラインサービスからのお知らせなど)は、Outlookのフォルダに仕分けない(移動させない)で、代わりに「プロモーション」など、Outlookの分類項目を作成して割り当てる。
- Outlookの分類項目を使って、受信トレイのメールをカテゴリ別に表示させる。
このようにすることで、Outlook上にたくさんあるGmailのフォルダ(ラベル)はアーカイブとして参照する必要がある時以外は殆ど見ることがなくなり、フォルダも畳んでおけるので、すっきりとした状態でメール処理を行うことができるようになります。
で、最適化後のイメージは以下のようになります。
最適化の手順
まずは送受信の高速化から始め、次いで受信トレイのカテゴリ化、最後にOutlookの削除に関する挙動設定について説明していきます。
掲載している画面は基本的にOutlook2010のものですが、Outlook2016と異なる部分については適宜画像などを追加しています。
クリックすると展開します。
同期させるフォルダについて
どのフォルダを同期させるかはお好みですが、とりあえずは「受信トレイ」と「スター付き」ぐらいで良いでしょう。「スター付き」をダウンロードする理由は、Gmailでスターをつけたメールを、送受信と同時にOutlookのTODOバーエリアに反映させるためです。
「メールアイテムの送信」についてはチェックを入れなくてもGmailは問題なく送信されました。「購読フォルダ内の未読アイテム数をカウント」についてはチェックを入れなくてもダウンロードさせるフォルダ(受信トレイなど)内の未読数はカウントされます。なお「すべてのメール」や「ゴミ箱」は送受信に時間がかかるためダウンロードさせません。
ラベル付け=Outlookでのフォルダ分けは、Outlookで受信してからOutlookの仕分けルールで行うのが望ましいのですが、どうしてもGmail側のフィルターでラベルをつけたいものがある場合は、ラベルに対応するフォルダのうち、以下の基準に照らして、必要なものにだけチェックを入れておきます。
またGmailのフィルタでラベルをつける場合は、Outlook側の操作で混乱するのを防ぐため、必ずGMAILの該当フィルタの動作で「受信トレイをスキップする」ようにしておきます。
フォルダにチェックを入れるか入れないかの基準
前掲完成イメージの赤いフォルダとしてチェックを入れるものは、
- 頻繁に届くメールで無条件で保存しておきたいもの
- かつOutlookのお気に入りエリアに検索フォルダを使って表示させたいもの
の中から厳選します。チェックを入れるフォルダの数が多いほど同期に時間がかかるので注意が必要です。
次に、Gmailの受信トレイからOutlookの受信トレイにダウンロードされたメールについて「仕分けルール」を使って「分類項目」を割り当てていきます。
受信トレイの最適化(カテゴリ分け)が不要な場合はステップ④に進んでください。
残念ながらOutlookはGmailの様に自動で「プロモーション」や「新着」といったカテゴリ分けを学習することができないので、メールアドレスや件名などを条件にしてOutlookの分類項目を割り当てる必要があります。
メールマガジンなどを大量に受信している方は、この登録作業が少し大変ですが、仕分けルールの完成度が上がってくるとお気に入りエリアの検索フォルダがGmailのカテゴリと遜色なく機能してきます。Gmail既定のカテゴリだけでなく「メルマガ」とか「●天市場」などのカテゴリを作成して、自分好みの受信トレイを作成しても面白いでしょう。
クリックすると展開します。
準備:仕分けルール用にアドレスを登録する
「メイン」のカテゴリに分類されるもの以外のメールについて、アドレスが一定のものについては予めOutlookにアドレスを登録しておくと便利です。
もちろん仕分けルールに直接差出人のメールアドレスを記述しても構いませんが、たくさんある場合はアドレス帳に登録しておいた方が後のメンテナンスが楽になると思います。登録については下のスライドを参考にして下さい。
仕分けルールを作成する
仕分け用のアドレス帳が完成したら、送受信時にOutlook上の分類項目を割り当てるための仕分けルールを作成します。
まず、一番最初に「メイン」カテゴリ用の仕分けルールを作成し、一旦すべてのメールを「メイン」に分類した後、各カテゴリの条件に該当するものについて分類項目を変更する(メインを消去してつけ直す)仕分けルールを作成していきます。
下の図を参考に、「メイン」「ソーシャル」「プロモーション」「新着」「フォーラム」の5つの仕分けルールを作成して下さい。
「メイン」を仕分けルールの先頭に持ってくるのと、その後の仕分けルールの処理に「分類項目を消去」と「仕分けルールの処理を中止する」を入れるのがポイントです。
仕分けルール作成画面へのアクセス方法
差出人の指定方法
仕分けルールの設定作業が終わったら、作成したメール仕分け用のアドレス帳フォルダを右クリックしてプロパティを表示し、「電子メールのアドレス帳にこのフォルダーを表示する」のチェックを外しておくと、メール作成時に仕分け用のアドレスを非表示に出来ます。
仕分けによって分類項目が付与されたメールを受信トレイ内でカテゴリ別に表示できるようにします。
以上で受信トレイ内のメールがGmailのカテゴリのように分類されて表示できるようになりました。
カテゴリの順序を変更したい場合は、割り当てるカテゴリの名前の先頭に数字をつければカテゴリグループをお好みの順番にすることができます。
① 送受信時にダウンロードするフォルダを限定するの手順で、受信トレイやスター付き以外にダウンロードするラベル(フォルダ)を指定している方は、そのフォルダをOutlookのお気に入りエリアに表示させることでメールへのアクセスが容易になります。
④までの作業で、Gmailの新しい受信トレイ風にメールをチェックできるようになってきましたが、この段階ではGmailのフォルダ構造をすべてOutlook側に「表示=購読」させているので、Outlook上にはGmailの「すべてのメール」や「下書き」など、Outlookでの操作には不要と思われるものまで表示されています。
特に「すべてのメール」フォルダを購読していると、Outlookでメールを検索したときに、各フォルダだけでなく「すべてのフォルダ」も検索結果として表示されてしまうなど、操作が混乱しやすくなるので、設定を変えて「すべてのメール」フォルダの購読を取り消します(≒Outlook上で表示したり同期させないようにします)。
Outlook2016の場合は「下書き」フォルダの購読は取り消すことが出来ませんので、「すべてのメール」と「重要」だけ購読を取り消します。
Gmailにはメールをアーカイブするという概念があり、それはそれで便利な機能ですが、やはりOutlookでのメールの整理は、削除とフォルダへの移動の方がしっくりきます。
初期設定ではGmailフォルダのメールを「直感的」に削除できないので、この設定を変えていきます。
Outlook2016では削除に関する挙動は改善されているようですが、念のため以下の設定を確認しておいて下さい。
以上で、Outlookでメールの「削除」ボタンを押したときに、Gmail側もアーカイブではなく「ゴミ箱」にメールが移動するようになります。
上手くいかない場合は、念のためGmail側の設定も確認してみてください。ちなみに私の設定はこの画像のとおりです。
OutlookのTODOバーは、通常のタスクだけでなく、連絡を取るべき相手や重要なメールにフラグを立てて確認や処理を促すように作られています。
ここにはGmail側でスターをつけたメールも表示されるのですが、ここでもやはりGmailとOutlookのメール管理の違いから、スターの付いたメールがダブって表示されてしまいます。
TODOバーは通常Outlookのメイン画面右下のエリアに表示されています。
そこでメールについては、前述の「①送受信時にダウンロードするフォルダを限定する」で、あらかじめダウンロードするように指定しておいた「スター付き」フォルダだけを表示させるように設定します。
以上でGmailのスター付きメールが適切にTODOバーに表示されるようになります。
TODOバー以外で、TODOが表示される場所(例えばOutlookのタスク表示モード)についても同様に設定します。
参考:最適化の効果(送受信時間の比較)
今回の作業で、私の環境における最適化の効果は以下のとおりです。
- 最適化前:約45秒
- 最適化後:約9秒
このように、ブラウザのGmailでなくてもOutlookで快適にGmailを操作できるようになりました。
今回ご紹介した最適化(カスタマイズ)は、仕分け用のアドレスを充実させたり、検索フォルダーの表示方法をご自身の用途に合わせてブラッシュアップしていく必要もあるので、万人向けではないでしょう。
ただ、Googleのメール、カレンダー、アドレス帳、TODO(タスク)をすべてOutlookで使えるようになると便利になるのはもちろん、Outlookを自分好みに育てるといった、ちょっとした充実感も味わえますので、興味のある方は挑戦してみてください。