HP EliteDesk 800 G4 DM のNVMe SSDを低発熱品に換装

先日中古で購入したヒューレットパッカード製のミニPC、HP EliteDesk 800 G4 DM に装着済みのTOSHIBA製SSD(M.2 NVMe)がかなり古いものだったので、今年の5月に新発売されたKingsoton製の安くて低発熱ものに交換することにしました。

交換前のSSDは熱かった

既存のSSDである TOSHIBA製 THNSN5256GPUK 256GB は、2017年ごろに東芝のカタログに掲載されていた製品で、EliteDesk 800 G4シリーズが2018年に発売開始されたことを考えるとおそらく最初から装着されていたものでしょう。

カタログより抜粋

カタログスペックによると動作温度が80℃まであるため耐久性は高そうですが、ヒートシンク付きでも通常動作時の温度が高めで、少し負荷をかけると簡単に70℃を超えてしまい、アイドル状態に戻ってもなかなか温度が下がりません。

EliteDesk 800 G4 DMのようなミニPCは、構造上ノートPC同様に熱がこもりやすいのである程度は仕方ないのでしょうが、高温状態が続くとパフォーマンスの低下やパーツへのダメージが心配されますし、なにより個人的にはファンがフル回転し続けてうるさくなるのが嫌です。

CrystalDiskMarkで連続3回計測直後の温度
計測後アイドル状態で10分放置後の温度
読み書きの速度はほぼカタログスペックどおり。
本体は片面チップ仕様。ヒートシンクは前の所有者がつけたもの

中古ミニPCに求められる M.2 NVMe SSD の条件

最近のミニPCはチップセット内蔵のグラフィック性能が高く、ちょっとしたゲームも快適にこなせるものも増えてきましたが、もともと HPのEliteDesk DM(35W)シリーズ、LenovoのThink Centre Tinyシリーズ、DellのOptiPlex Microシリーズ に代表されるミニPCは、省スペースや省電力を考慮した法人向けモデルで、ゲームやクリエイティブな作業よりも一般的な事務処理向けのスペックとなっています。

当然、内部の熱対策もスペックや用途に見合った設計になっているために、ゲーミングPC向けのような超高速のSSDに交換しても、排熱が追い付かないことで本来のスペックを発揮できず、投資したコストに見合う結果を得られません。

つまり、EliteDesk 800 G4 DMのようなミニPCに求められる M.2 NVMe SSD の条件は、

  • 低消費電力・低発熱

  • 耐久性

  • 低価格

の3つです。現在新品で販売されているM.2 NVMe SSDで極端に遅いものはないので、読み書きの速度よりもミニPCに装着したときに確実にカタログスペックが発揮できることの方が重要です

※ 3つ目の条件については、節約のために中古PCを買ったのに高価なパーツを取り付けては本末転倒になるため条件としました。

自分のPCに対応する M.2 NVMe SSDを確認する

自分のPCに対応する M.2 NVMe SSDを確認するには PCの仕様表とCPUおよびチップセットの仕様表から M.2スロットのサイズ、対応するPCIeのリビジョンとレーン数を調べます。例えばHP EliteDesk 800 G4 DM のカタログを見ると 装着できる M.2 SSD は NVMe接続で 2280(22mm x 80mm)または 2230(22mm x 30mm)で、スロットが対応するPCIeのレーン数は4です。また、搭載されている Intel® Q370 Chipset および インテル® Core™ i5-8500T プロセッサー が対応するPCIe(PCI Express)のリビジョンは 3.0(Gen3)だということがわかります。

PC仕様表の「拡張スロット」欄からストレージ用のM.2スロットのサイズと PCIeのレーン数がわかる
PCの仕様表
チップセット仕様表の「拡張オプション」欄からPCIeのリビジョンがわかる
チップセットの仕様表
同様にCPU仕様表の「拡張オプション」欄からPCIeのリビジョンがわかる
CPUの仕様表
参考

もちろん、すでに装着されているSSDの仕様を調べて同じ規格のものを探してもよいです。

低消費電力・低発熱 の おすすめ M.2 NVMe SSD

前述のとおり、EliteDesk 800 G4 DM に対応するのは、M.2の2280または2230サイズでNVMe規格の PCIe Gen 3.0 x 4レーンのものということになりますが、サイズについては一般的な2280で探します。

この規格に適合するSSDをAmazonで調べると、Western Digital – WD Black SN750Samsung – SSD980 が PCIe Gen3における理論上の上限速度に近い性能を発揮できるようですが、高速なぶん発熱も価格も高めです。どちらかというと熱対策のしっかりできる大き目のデスクトップPC向けのようで私が求める条件には合いません。

そこで見つけたのが、KingsotonのNV1-E です。

低消費電力・低発熱のトレードオフとして WD Black SN750 や SSD980に比べると 速度は控えめですが、冒頭の2017年のTOSHIBA製 THNSN5256GPUK と比べるとかなり高速です。

なお、Kingsoton NV1 に搭載されているNANDフラッシュメモリの構造規格は QLC で、現時点で一般消費者向けの主流となっている TLC に比べてデータの記録密度が高いぶん、速度や耐久性の面で不利であるといわれています。例えば耐久性を示すTBWの値を容量500GBモデルで比較すると WD Black SN750 や SSD980が 300(保証期間は5年)である一方、Kingsoton NV1は120(保証期間は3年)です。

Kingsoton NV1 の仕様(抜粋)

項目
フォームファクタM.2 2280
インターフェイスNVMe™ PCIe Gen 3.0 x 4 レーン
容量500GB、1TB、2TB
連続読み取り/書き込み2100/1700MB/秒(全容量モデル)
耐久性500GB – 120TBW
1000GB – 240TBW
2000GB – 480TBW
消費電力アイドル時:5mW
読み取り時:1.1W(最大)
書き込み時:3.3W(最大)
平均消費電力500GB – 205mW
1000GB – 220mW
2000GB – 340mW
動作温度0°C~70°C
保証/サポート3 年限定保証、無料技術サポート

詳しくは公式サイトでご確認ください。

これらの特徴をどのようにとらえるかは個人差があるでしょうが、耐久性120TBWの場合、1年で10TBのデータを書き込んでも理論上12年は使えるわけで、速度や消費電力・発熱面、価格を含めると、総合的に Kingsoton NV1 には充分な実用性とコストパフォーマンスがあります。

EliteDesk 800 G4 DM にM.2 NVMe SSDを取り付ける

購入したKingsotonのNV1-Eを早速取り付けます。取付方法は公式サイトからダウンロードできるハードウェアリファレンスガイドにも記載がありますが、HP公式のYoutube動画がわかりやすくておすすめです(ただしナレーションは英語)。

以下は製品および取り付け時の写真です。NV1は低発熱がウリなのでヒートシンクは本来必要ないのかもしれませんが、今回は少しスペースがあるので、別売りのヒートシンクを取り付けて放熱効果を高めることにします。

SSD本体は紙の台紙でブリスターパックをサンドイッチした状態です。今回は放熱効果をさらに高めるため別途ヒートシンクも購入しました。
パッケージ外観
メモリチップの上に型番やらが記載された保証書兼用のシールが貼ってあります。片面仕様で省スペースです。
本体表・裏
パッケージの台紙内側にはAcronis True Imageの機能限定版のアクティベーションキーが印字されています。
パッケージ内側
ヒートシンクはSSDとの間に熱伝導シートを挟んでシリコン輪ゴムで固定します。
ヒートシンクの取り付け
古いSSDが刺さっていたM.2スロットに装着してねじ止めしたら完了です。
取付完了
付属のAcronis True Image OEMを使ってSSDのクローンを作成する場合は 2つ目のM.2スロットを使用して新旧SSDを装着します。
SSDのクローン作成時

ヒートシンクを選ぶ際に注意すること

一般にヒートシンクは表面積が多いほど放熱しやすいので冷却性能が上がりますが、EliteDesk 800 G4 DMの内部はそれほど広くないのでヒートシンクを購入する際は以下の点に注意します。

  • 背の高いものは避けます
    特に2.5インチのHDD等を搭載するためのSATAドライブベイキットが装着されている場合は、真下にあるM.2スロットに干渉するため、ヒートシンクの取り付けをあきらめるか、より薄いヒートシンクを検討します。もっとも、SATAドライブベイキットには底面にファンが搭載されているのでヒートシンクは不要なのかもしれません。

  • フルカバータイプは避けます
    SSD本体よりも横幅が大きいと、M.2スロットすぐ脇を通るWi-Fi用アンテナケーブルに干渉してケーブルを損傷するかもしれません。

ちなみに今回私が使用したのはこちらのヒートシンク

Kingsoton NV1-E のベンチマーク

SSDの交換作業も無事終わったので、最後にCrystalDiskMarkを使ってベンチマークをとってみました。結果、読み書きの速度は製品公称値よりを少し上回る良い結果が出ました!SSDの温度もベンチマーク連続3回実行直後は高くなりましたが、ヒートシンクのおかげもあるのでしょう、10分後には正常範囲に下がり安定しています。

CrystalDiskMarkはメーカー公称値を上回る好成績
CrystalDiskMarkで連続3回計測直後の温度
計測後アイドル状態で10分放置後の温度

これでこの夏は安心して過ごせます。良い買い物でした。