私の父は昆虫採集が趣味で、毎年初夏には北海道にまで出かけていきます。旅先で同じ趣味の仲間たちとの語らいや、その日のボイスメモを録音したりするのにICレコーダーを使っているのですが、これまで自分で買ったICレコーダーはどれもボタンや文字が小さく、機能が多い分操作も複雑なものらしく、「使いづらくてしょうがない」とこぼしていました。
そこで「父の日」に、ICレコーダーをプレゼントすることにしました。今回は「お年寄り向け」もとい「シンプル・簡単な」ICレコーダーを購入すべく物色した時のメモと、最終的に購入したSONYの ICD-LX31のレビューをお送りします。
登場する各機種の型番や商品画像は、本投稿の更新日時点の最新版に差し替えています。詳しい仕様や価格についてはリンク先でご確認ください。
大手3社の「簡単操作」モデル
まずは、ICレコーダー大手3社から出ている「簡単操作」がウリのモデルを見てみました。
なお今回は、高音質や多機能であることよりも 機械の操作が苦手なひと(操作が億劫なひと) が、あまり煩わされずにスタンダードな性能と機能を使いこなせるかどうかを評価基準にしています。
OLYMPUS Voice-Trek DP-401
※ 初回投稿時のモデルは DP-301
いいところ
- 手のひらサイズの本体正面に再生・停止・録音の大きなボタンが配置されているほか、電源、再生速度、再生時のノイズキャンセル、消去などおよそよく使う基本機能が、独立したボタンやスイッチとして存在しているところがマル !
- 集音機能、FMラジオ搭載
- 録音した音声だけでなくFMラジオもゆっくり再生する機能を搭載
- 音声操作ガイド機能
- 内蔵メモリが4GBあるのでSDカードがなくても最大65時間録音可能。32GBのSDカードなら約520時間の録音が可能
残念なところ
- A-B区間リピートはできない。
- 早送りや頭出しボタンが共通なので、長押しで使い分ける必要がある。
- 液晶のバックライトなし
- ラジオ聴取時は付属のイヤホンが必要(ただしスピーカーで出力は可能)。なお約録音は出来ない。
パナソニック RR-SR350
※ 初回投稿時のモデルは RR-SR30
いいところ
- カセット式ウォークマンが全盛だった頃を彷彿とさせるデザインはともかく、録音、再生、停止などのボタン配置は他の製品よりも断然馴染みやすく直観的
- 音声ガイド、遅聞き機能搭載
- 本体スピーカー2個搭載(※モノラル)。録音およびイヤホン再生はステレオ
- 集めた音をイヤホンからリアルタイムに聴ける集音器として使える。
- 内蔵メモリが8GBで最大180時間録音可能
残念なところ
- SDカードなどの外部メモリがないので、用途ごとにSDカードを使い分けることができない。つまり録音件数が増えれば増えるほど、日付検索などのメニュー操作が要求される
- A-B区間リピートはできない。
- 早送りや頭出しボタンが共通なので、長押しで使い分ける必要がある
- 液晶のバックライトなし
SONY ICD-LX31
※ 2013年発売のロングラン製品
いいところ
- 本体のデザインは異なるものの、ボタン配置や機能、本体上部に傾斜をつけている点など、上記Panasonic SR30とよく似ていて使いやすい(もっとも、発売されたのはSONYの方が先)。
- メニュー操作に必要なボタンが液晶下部に集約されているほか、特に早送りや頭出しのボタンが独立している点は、直観的な操作感につながるので好印象
- 録音レベルや音質は自動制御
- 内蔵メモリを持たず、用途ごとにSDカードを差し替えて使い分けるといった割り切りが、むしろ心地よい。なお8GBのSDカードが同梱されている
残念なところ
- 上記2製品に比べて、やや大きく重い。A-B区間リピートやゆっくり再生機能はない。
- 自動制御であるため、録音レベルや音質を任意に切り替えることができない。
- 液晶のバックライトなし
ちょっと気になったその他のメーカー
OHM ICR-SD308K
ICレコーダーとして考えると、持ち歩くにはちょっと大きく、マイク部分は小さいです。基本的には単三電池で動くポータブルラジオに、録音機能が付いた製品です。
AM/FMラジオが聞けて、ワンプッシュで録音・タイマー録音もでき、ボタンは日本語表示で本体前面に集約されている点は、比較的簡単な操作感が期待できます。
※ PCとUSB接続するためのケーブルやステレオイヤホンが付属。なお、記録メディアは通常のSDカードではなく、micro SDを使用。
Logitec LIC-RR100
上記OHM製はラジオ主体であるのに対して、こちらはICレコーダー機能に力が入っている製品。サイズも一回り小さく軽いです。
本体上部左右にマイクを搭載し、ステレオ録音が可能な点は、SONY ICD-LX31にも通じますが、平置きではなく立てて使うことも想定しているため、本体に傾斜はついていません。
ラジオ選局等が本体前面のダイヤルで出来る操作性の良さ、バックライト搭載、リニアPCMによる高音質録音など、なかなかに良く練られています。
※ 本体のスピーカー出力はPanasonicやSONYの最大330mwに比べて低めの50mW。記録メディアはmicroSD。AM/FM対応。USBでPC接続も可。
YAMAZEN YVR-R600
キュリオム(山善)製の、複数ある操作ボタンがシンプルなICレコーダー。
小型サイズながらわかり易く反応の良いボタン、高音質のリニアPCM、カラー画面、AM/FM予約録音はなんと20件などなど盛りだくさん。
ホワイト、ブラック、レッドの3色展開やポケットサイズという点では、前述のOLYMPUS DP-301の高機能・高性能版みたいな感じの製品です。
強いて難点を挙げるとすれば、値段が高めであることと、コンパクトなボディーに大きめのボタンを配したために、スピーカーが本体背面にあるところでしょうか。
今回はSONY ICD-LX31を購入
本体カラーにブラックのある OLYMPUS DP-301 も魅力的だったのですが、店頭で手に取ってみた質感と、ディスプレイのサイズ・見やすさ(文字が大きい方が良い)、また私の父が使う用途を考えて、最終的にはSONY ICD-LX31を選択しました。
Panasonic SR30 はSDカードが使えないので却下。その他のメーカーを候補から外した理由については前述のとおりです。
使い勝手
使い勝手の基準は人それぞれですが、機械操作が苦手な父でも、ひと通り使い方を教えたら、取説も持たずに旅先の北海道で無事に録音して帰ってきました。本人曰く、「前のやつよりわかり易いし使いやすい。音もよく聞こえる」とのことでした。よかった、よかった。
SONY ICD-LX31のレビュー
パッケージ&製品外観
サイズ感
液晶画面等
液晶画面の解像度はスマホなどに比べて高くありませんが、この辺は各社横並びなので問題ありません。
この機種にはバックライトが搭載されていないため、暗いところでの操作には不向きですが、再生ボタンや録音ボタンなどに指で触ってわかるような突起やへこみが施されているので、慣れれば基本操作は暗いところでも可能です。
PCのキーボードで「F」と「J」に突起があるのと同じイメージ。なお屋外での視認性は高いです。
以下の画像は、光の関係で斜めから撮影しているため文字に影がついて見えますが、実際に正面からみるとくっきりと見えます。
音質
ICD-LX31の録音形式はMP3で、ノイズキャンセル機能などはありませんが、室内での会話やママさんコーラスなどの録音には十分なレベルです。
本体スピーカーの出力は330mWと同種の他社製品と比べても大きく、音量を上げれば録音レベルが低いものでも聞き取りやすい印象です。ただ本体スピーカーでは若干ホワイトノイズが入るような気がしました。
参考までに木造家屋の室内(広さ9畳)でエアコンをつけた状態で、スピードラーニングを再生した音声を載せておきます。
ICD-LX31では、録音レベルが自動で調整されるので、音声の聞こえ方にそれほどの違いは感じられません。エアコンからの風が当たっていない分、2番目のほうが少し良いかもしれませんが、その辺は本体の向きを変えるなどして調整できそうです。
簡単操作がウリのICレコーダーをひととおり見てきました。ICレコーダーは高性能・高機能な高級モデルも沢山ありますが、実際仕事で使うのでもない限り、そこまでの性能や機能を必要としない方も多いのではないでしょうか?
簡単モデルは、お年寄り向けの印象が強く、コンパクトさに欠けるものがほとんどですが、機能が絞られている分、録音だけでなく再生も簡単で「とても気軽に使える」ので、学生の方が机の上に置いて講義を録音したりするのにも重宝します。
特にICD-LX31などは、後で講義を復習する時も「机の上でのおさまりが良い」です。科目ごとにSDカードを差し替えて使うといったこともできます。
今回はプレゼント用として購入しましたが、レビューしてみて、ちょっと自分用にも1台ほしくなりました。ただ、この種の製品は、カラーがホワイトのものがほとんどなので、ブラックなどのカラーバリエーションが充実してくれることを期待します。
というわけで、お年寄りでなくても、簡単操作のICレコーダーをお探しの方の参考になれば幸いです。