個人ユーザーが PC版(≒デスクトップアプリ版 Microsoft Office)のOutlookとiPhoneの情報を連携(同期)する主な方法には、大きく分けて以下の3つがあります。
- iCloud 経由で同期する方法
- Outlook.com 経由で同期する方法(EAS=ExchangeActiveSync)
- Googleなどのクラウドサービス経由で同期する方法
今回は 上記2番目のOutlook.com経由で iPhone標準アプリとPC版Outlookのメール・カレンダー・アドレス帳・タスクを同期する方法について解説します。
同期イメージ
次のスライド1枚目は、Outlook.comを利用した場合のiPhoneとPC版Outlookの同期イメージを大まかに表現したものです。
簡単に言えば、iCloudが担っていた機能をOutlook.comに置き換えるわけですが、これによってiPhoneとMicrosoft系のサービスやアプリとの連携がシームレスになります。
上記スライド2枚目以降は、この記事で解説する各作業工程を分解したものです(色付きの部分)。シンプルに使う場合はスライド2枚目に示す「基本編」のみでもOKです。
作業のゴール
Outlook.com経由で同期させるメリットとデメリット
クリックすると展開します。
メリット
- メール保存容量が15GB
無料版では15GBまで使用できます(以前は無制限でした)。その分iCloudの容量を確保できます。 - iCloudメールよりも高度な自動メール仕分けが可能
たとえば差出人が〇〇 かつ件名が〇〇といった具合に、複合的な条件によるメールの自動仕分け(フィルタ)やリダイレクト(FW転送でなはなく直接転送)も可能です。メール仕分けルールはブラウザ上で作成・管理します。 - iCloud同様に標準メールアプリでプッシュ通知が可能
ちなみにGmailの場合はプッシュ通知に非対応のIMAP方式 - 最大10個のメールアドレス(=9個のエイリアスアドレス)が利用可能
メインのメールアドレスのほかに9個のエイリアスアドレスが作成できるので、複数のメールアドレスを使い分けたい場合も便利。ちなみにiCloudメールは3個まで。 - iCloud for Windowsなしでも、PC版Outlook(2013以降)とメール、連絡先、カレンダー、リマインダー(タスク)が同期可能
iCloud for Windows でPC版OutlookOutlook と同期させる場合の技術的な制限事項については、Windows 用 iCloud での Outlook の使用に問題がある場合(Apple公式ヘルプ)の「Outlook では動作が異なる iCloud の機能」の箇所を参照
デメリット
- カレンダーで「移動時間」と「予備の通知」のオプションが利用できない
「移動時間」のオプションでは、指定した場所から予定場所への移動時間もしくは指定した時間ぶんを本来の予定開始時間に加えて表示させることができます。また「予備の通知」オプションでは、例えば通常の通知を「出発時間」とした場合に、追加で分前にも通知するといった指定をすることができます。 - リマインダーで「指定場所で通知」のオプションが利用できない
「指定場所で通知」のオプションでは、あらかじめ指定場所から指定した範囲内に移動した際にリマインダー通知することができます(例:駅に着いたら買い物リストを通知する)。
これらデメリットは、iPhone(apple)独自の項目とOutlook.comの項目に互換性がないことに起因します。普段、これらの項目を使わない方であれば問題ありません。
基本編:Outlook.comをiPhoneとPCで使えるようにする
各端末で使うメールが@outlook.comメールだけなら、基本編のみで作業完了です。
MicrosoftアカウントをiPhoneとPC版Outlookにセットアップ、メール・カレンダー・連絡先・タスクのすべてがOutlook.comのサーバを介して同期します。
メールアドレス自体は、@outlook.com以外に、@outlook.jp、@live.jp、@hotmail.com、@msn.comなどOutlook.comで利用可能なものならOKです。
新しい Microsoft アカウントを作成する方法 – Microsoft
②でiPhoneに追加したOutlook.comアカウントを PC版Outlookにも追加します。
必要に応じてメールの自動仕分けルールや仕分けたメールを保存するためのフォルダを作成します。
この作業はiPhone、PC版Outlook問わず、ブラウザでOutlook.comにログインしておこないます(PC版Outlookでも作成可能ですが、メールのリダイレクト処理はWeb版からしか設定できません)。
なおWeb版のOutlook.com上での操作は自動的にiPhoneやPC版Outlookに反映されます。
フォルダに自動仕分けされたメールをiPhoneでプッシュ通知するには
- iOSの「設定 > アカウントとパスワード > データの取得方法」の順にたどり、設定したOutlook.comアカウントをタップします。
- 「プッシュ対象メールボックス」欄からプッシュ通知させたいフォルダをタップし、チェックマークをONにします。
以上の作業でiPhoneのデフォルトアプリにOutlook.comアカウントが設定され、メール・カレンダー・アドレス帳・タスクがPC版のOutlookと同期するようになりました。
iCloudやGmail、Yahooなど他のクラウドサービスからOutlook.comに一本化する場合は、既存の各種データをOutlook.comに移動させてください(移動についてはこの記事では解説していません)。
発展編1:Outlook.comに外部メール(受信)を集約する
ここからは、GmailやiCloud、プロバイダーメールといった複数の受信メールを、Outlook.comのメールボックスに集約させていきます。
Outlook.com以外のメールを使いたい方でも、メールをOutlook.comに集約させることで、PC版OutlookやiPhone純正メールアプリを使って、全てのメールを一元管理できるようになります。
iCloudメール、Gmail、Yahooメール、プロバイダメールなど、お使いのメールをOutlook.comに自動転送(リダイレクト)させます。
自動転送の利点は、Outlook.comに外部メールを接続する方法に比べてメール受信までのタイムラグが短く、動作が安定していることです。
以下は、代表的なフリーメールの自動転送設定に関するヘルプです。プロバイダーメールをご利用の方はプロバイダーが提供しているヘルプを参考にして、Outlook.comアカウント宛にメールを自動転送する設定をしてください。
- iCloud: 自動的にすべてのメッセージを転送する – Apple
- Gmail のメールを他のアカウントに自動転送する – Google
- ほかのメールアドレスへメールを転送する – Yahoo!
自動転送設定の際、必ず自動転送後にメールを残さない(=削除する)ようにします。メールを残す設定にしてしまうと、発展編2で外部メールをiPhoneやPC版Outlookから送信する際に影響が出ます。
自動転送設定をおこなう前のメールは、手動でOutlook.comのメールフォルダに移行させる必要があります。
メールを移行する最もシンプルな方法は、PC版Outlookに 移行させたいメールアカウントをIMAP方式でセットアップして、移行元のメールフォルダからOutlook.comのフォルダへメールをコピーする方法です。
いきなり移動させるのではなく正常にコピーが完了したのを確認してから、移行元のメールを削除するとより安全です。
移行させるメールが少ない場合は、iPhoneに移行元のアカウントをセットアップしてOutlook.comのメールフォルダに移動させても構いません。
メールボックスにメールを移動する – Apple
iPhoneでアカウントをまたいでメールを移動する場合は、移動先のメールボックス(フォルダ)選択画面が表示されたら、画面左上の「アカウント」をタップして移動先のアカウントを選択します。
以上の作業でiCloudやGmail、プロバイダーメールなどの外部メールもOutlook.comの受信フォルダで管理できるようになりました。
発展編2:Outlook.comに外部メール(送信済)を集約する
発展編1では、外部メールの受信メールを集約しましたが、ここからは外部メールアカウントを使って送信したメールもOutlook.comの送信済みフォルダに集約させていきます。
ここでの作業は、まずiPhone純正メールやPC版Outlookに、発展編1で集約した外部メールアカウントを送信専用として設定し、ついでそれらの送信済メールの仕分け処理をOutlook.comに設定するといった流れになります。
発展編2は、基本編および発展編1の設定が前提となっています。あらかじめ自動転送設定と既存のすべてのメールのOutlook.comへの移行を済ませておいてください。
送信専用アカウントを iPhoneとPC版Outlookに設定します。
クリックすると展開します。
iPhoneでの作業
自動転送設定により外部メールアカウントのメールボックスは空になっているので、POP接続をしてもメールは受信されません。
結果的に外部メールのSMTP部分だけ利用する送信専用アカウントとして機能します。
外部メールの送信は、Outlook.comのサーバーを経由しないので、そのままではOutlook.comの送信済みフォルダに残りません。
そこで、常にBCCに自分を追加することで「控え」のメールを最終的にOutlook.comのメールボックス(送信済みアイテムフォルダ)に保存させます。
PC版Outlookでの作業
PC版Outlookの場合も、前述のiPhoneの場合と同様にPOP接続でメールアカウントを設定し、外部メールの送信メールサーバー(SMTP)部分だけを利用しますが、送信済みメールの保存方法が少し異なります。
メール アカウントを Outlook に追加する – Microsoft
「ファイル > アカウント設定」を開き、「データファイル」タブに切り替えたら、一覧から、Outlook.comのデータファイル(.ostファイル)を選択し、「既定に設定する」をクリックします。
- Outlook.comの.ostファイルを既定のデータファイルに指定すると、メール送信時にメールの控えがOutlook.comの「送信済みフォルダ」に自動で保存されるようになります。
- 2個目以降の送信専用アカウントを登録する場合は、こちらの画像のように既存のデータファイルにメールを配信させることで、無駄なデータファイルの作成を防ぐことができます。
- 既定のデータファイルをOutlook.comに変更したくない(またはできない)場合は、有料のPower Toys for Outlookのようなアドオンソフトを使うか、Outlookのマクロを使って自動BCCを設定しても良いでしょう(上級者向け)。
iPhoneとPC版Outlookで送信専用アカウントの設定が終わったら、ブラウザでOutlook.comにログインし、以下のメール仕分けルールを設定します。
- 条件1:差出人が上記プロバイダメールアドレス
- 条件2:および自分の名前が「宛先」ボックスにない場合
- 処理1:メールを「送信済みアイテム」フォルダに移動する
- 処理2:およびメッセージを開封済みにする
このルールは、外部メールの送信時に外部メールの受信トレイに着信した自分宛のBCCメールがOutlook.comの受信トレイに自動転送された際、Outlook.com内の受信トレイから「送信済みアイテム」フォルダに移動させます。
以上の作業でiCloudやGmail、プロバイダーメールなどの外部メールから送信したメールもOutlook.comの送信済フォルダに集約され、すべての情報を一元管理できるようになりました。